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真っ暗な闇
どこまでも続く黒い世界
満月は嘲笑う
鉄の臭いがする真っ赤な血
3月4日
産まれてはじめて、桜七恵は人を殺した。
* * * *
「あっははー」
缶ジュースを飲みながら、このはが笑う。
そのとなりでは、顔中に血ががついた強張った表情で七恵は背中が震えてる。
手には、スコップ…真っ赤な血が大量に付いていた。
「そんなに、怯えないでよ七恵。すごく素敵だったわよ?はじめは怖がってたくせに、さっき襲ってきたクラスメイトの男子たちを3人も頭を、スコップで殴り殺しにしたじゃない」
「や、やめて!あれは、ナイフを向けられてとっさに」
「言い訳しないでよ、人を殺しといて」
その感情のない声に、七恵は言葉を詰まらせる。
このはの、冷たい瞳はまるで人形のように冷たく光っている。
「七恵少し変わったね、昔はもっと素直だったのになぁ…
ねぇ、七恵…なんで私が貴女を助けてあげてるのか知りたくない?
私は、七恵にすべてを救われたの…
だから貴女を守るわ、誰にも傷つけさせない」
すると、このはの白くて華奢な手が七恵の頭を愛撫すると何かが七恵のなかで話しかける。
七恵は、泣きながら…
…が、守ってあげるね
まるで、それは忘れていた大切な何かが
記憶の片隅で動く。
だけど、思い出せない。
女の子の声だ、とても優しい…
あれ、誰だ?
だけど、私はあの女の子を知っている…?
「七恵、着いたよ」
このはの声にはっと目覚めるように、七恵は意識が戻る。
さっきから感じるこの違和感はなんだ?
このはといるときから、ずっと何かが絡まる。
「プラネタリウム?」
閉店された建物の看板をみて、七恵は言う。
中にはいると薄暗くて、不気味だ。
なんだか、肝試しに来ている気分で背筋が一気に凍りつく。
「七恵ったら怖がり…あ、七恵の肩に白い手が」
「きゃぁああー!」
予想通りの反応に、このはは大爆笑するが七恵はからかわれてる事に気づくと頬を膨らませる。
まるで小学生の子供みたいだ。
「ひどい、秋山さん!」
「あっはは、ごめぇん…あ、そのさ…
秋山さんってやめてよ。
このはって呼んで?
私の名前…七恵だけが呼んでいい…七恵にそう呼ばれると不思議と何だって頑張れるの私っ!」
やはり、このはが笑うと絵にかいたような品のある美しさがある。
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