51人が本棚に入れています
本棚に追加
この川の向こうに、愛しい人が待っているなら泳ぐだろ、と村橋武は着ていた浴衣を脱ぎ捨て、星々のまたたく美しい川へ飛び込んだ。
その水音に気づいた浦上将志は、今日が一年に一日だけ流れがゆるやかになる日だと思い出す。
「武さん、危ないからやめて下さい!」
それでも、勢いを止めずにクロールしてくる武に、将志は青い浴衣のまま川へ入った。
すぐに深くなってしまい、本能的に足をとめる。
そこへ、息を乱した武が到着し、抱きしめてくる。
「あ……」
「……一年ぶり。やっと会えた」
星がひとつ、濡れた武の髪に引っかかってきらめいている。
川を流れる星たちも、いつも以上に綺麗で、それに気づいた武が拾い集め、俺の上から降らせた。
「綺麗だ」
「……はい、とても。胸が苦しいくらい」
半裸のあなたが、とは言えずに、将志は武の髪についていた星に手をのばす。
パシッ、とその手首を掴まれ、いきなりの強引なキスをくれる。
息ができない、と抗議して武の胸を軽く叩く。
「離して……下さい」
「それは無理」
もう一度のキスに息が続かず、かくんと膝が折れた俺を、武さんが支えてくれる。
「……お願い」
「聞くよ、何でも」
最初のコメントを投稿しよう!