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「この先どれだけ星が増えて、俺がその美しさに霞んでしまっても、俺のことを愛してくれますか」
「君が、対岸で待っててくれるなら」
「……はい」
甘くて、嬉しくて。
川の水で冷えてしまった武の身体を抱きしめる。
「将志……、もったいないな、夜空みたいな色の浴衣が」
「そんな……ちょっと濡れるぐらい平気です」
「いや……、脱がせば見れないな、と思って」
「え……っ」
「(この展開はマズくないか、初男)」
「(大丈夫です、先生!)」
「持てるだけ星を拾おう。寝台を飾って、この輝きだけで、君と」
「武さんとなら……俺……、どんなに暗くても平気です」
「それでは君の顔が見えない」
髪にひとつ、星を飾ってくれた。
「見えます?」
「見えます」
俺からの、精一杯のキスをする。武さんみたいに、巧くはできないけど。
「真っ赤になった、よく見える」
「……星、取って。恥ずかしい」
「大丈夫、そんなこと言える余裕、なくしてやるから」
背中を押して、寝台まで連れて行かれる。
「(初男、そんなの台本にない!)」
「(いいえ、ここはせっかくですし!)」
寝室に拾った星々を散らばせた武は、星のひとつに口づけ、枕元に置いた。
「緊張してる?」
「……少し」
「うん?」
「川の中にいるみたいで……またあなたと引き離されそうで……、怖い」
「おいで。絶対に離さないから」
「……はい」
この星だけは、明日からもずっとそばに持っていよう。
武さんの触れた唇を記憶する、ただひとつの。
星。
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