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その時、成瀬さんが言った。
「浮気される側にも原因があるんじゃねーの?」
…ごもっとも。
正にその通り。
わかってたけど、自分以外の人から言われると、心にガツンとくるわ。
ガツンときすぎて、思わず涙が出てきちゃったりして。
そう、誰のせいでもない。
わかってる。
そんなこと。
意外にもほんの少しだけ成瀬さんがうろたえると、部長が助け船を出してくれる。
「藤森が悪かったわけじゃない。ただ、もう少し男を見る目を変えろ。いい男をちゃんと選べ。」
その言葉は私の心に染みた。
私は珍しく素直に「はい。」と返事までして頷いていた。
納得したのと同時に、またゆいと部長のことを思った。
ゆいは部長と付き合うまでに3年間彼氏がいなかった。
この容姿で、この性格。
みんなが不思議に思うのは当然だった。
社内で私とゆいが親友のように仲がいいことは周知のことだったから、みんなその疑問をゆいではなく、私にぶつけた。
『室井さんて、なんで彼氏つくんないの?』
その度に私はこう答える。
『仕事が恋人だから。』
何度もそう答えた。
その間にもゆいに告白する人は何人もいた。
何人目かで私が言った言葉。
『とりあえず、付き合ってみれば?』
ゆいは付き合うなら自分が好きな人とと、その態度を頑(カタク)なに変えなかった。
今なら思える。
私の浅はかな考えだったと。
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