始まりはある日突然に、というものですよね

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中へ入ると、灯りはロウソクの炎のみで、たっぷりとした布地が使われている黒いカーテンが引かれて、薄暗く神秘的な雰囲気が演出されている待合室があった。 私たちはさらに奥の部屋へ案内された。 そこも黒いカーテンで待合室と同じような演出がされている部屋だが、部屋の中央に置かれた机を挟んで、向かい合わせに座る形になっている。 机の上では、よくわからない香りのお香が焚かれて、直径10㎝程の大きな水晶玉が置かれていた。 「さあ、そちらへお掛け下さいね」 店主の女性に勧められて、結衣と私は並んで椅子に座った。 机を挟んで、店主の女性も椅子に座る。 「では、ようこそ、私は占い師の【マルリス】といいます。 私は霊感占いで、主に前世を視て判断しますが、水晶占いもできます。 どうなさいますか?」 店主の女性【マルリス】さんは、私たちの顔を交互に見ながら言った。 【マルリス】というワードを聞いて、また私の心臓がドクンと跳ね上がる。 もう内科か精神科かわからないが、病院に行った方がいいレベルかも知れない…私の体は一体どうしてしまったのだろうか? 「私は前世を視てもらいたいです! 伊知乃もそれでいいでしょ?」 「う、うん」 結衣の期待に満ちてキラキラした瞳に負けて、私は返事をする。 「わかりました。 ではどなたから占いますか?」 「私からお願いします!」 待ちきれないように、結衣は言った。 私も結衣から占ってもらうつもりだったので、頷く。 「わかりました。 では気持ちを楽にして、この水晶玉を見つめていて下さい」 マルリスさんがそう指示すると、結衣は一度深呼吸してから、じっと水晶玉を見つめ始めた。
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