始まりはある日突然に、というものですよね

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「でも、伊知乃は残念だったね。 あの人霊感が本物っぽかったのに、視えないなんて」 「まあ、仕方がないよ。 そういえば、さっきのペンダントは…」 私はマルリスさんからもらったペンダントを取り出す。 「せっかくだから、着けてみれば?」 「うん、そうだね」 「着けてあげるよ」 結衣はペンダントの留め具を外して、私の首に手を回し、着けてくれた。 「何かいいんじゃない?」 結衣はペンダントを着けた私を見て言う。 チェーンは少し長めで、ペンダントトップは私の鎖骨よりも下の、胸の真ん中辺りにきていた。 「この材質は何だろう…銀かな? それにしては軽いような…チタンかな?」 私は、銀色のプレートをくるくる回しながら、全角度から見る。 細かい文字や記号のようなものが、小さく隙間なく彫られているだけで、銀製品の『925』とか金の『K18』とかステンレス素材やチタンの『stainless steel』『titanium』など、材質に関しての情報は刻印されていなさそうだ。 「タダでもらったものだし、たとえ真鍮製だったとしてもいいんじゃないの?」 「確かにそうだね」 せっかく身に付けるならば、肌に優しい素材がいいと思ってしまったのだ。 タダで手に入れたものに対しては贅沢な望みだろう。 結衣に言われて、私は笑う。 そこへ、ちょうど注文した結衣のオムライス定食と、私のハンバーグ定食が運ばれてくる。 「美味しそう!」 「食べよ! いただきまーす」 私たちは料理を食べ始めた。
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