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昼間にも関わらず、どんよりと暗雲が立ちこめていて、辺りは薄暗い。
人里から離れた、大きな屋敷の薄暗い地下室。
その部屋はとても広く、100人位入っても余裕がありそうに見える。
その地下室の、石畳で覆われた床の中央には、赤い線で描かれた、大きな魔方陣があった。
そして、その魔方陣の周囲を囲むように大勢の人々がいる。
ただ、立っている人間は少ない。
皆倒れていて、刺されたり、切られたような傷があり、その人々から流れ出す血が、石畳の床を赤く染めていた。
立っている数人の人間も傷を負っていて、荒い息を吐きながらこちらを見つめている。
その人間たちの中でも、一番年上と思われる男性が、息も絶え絶えに言葉を発した。
「貴様などに…我が一族の悲願を…邪魔されてなるものか…!!」
それに返事をするように、剣が男性を容赦なく切り裂く。
男性は、悲痛な叫び声をあげながらその場に崩れ落ちた。
傷を負って残っていた人々も、次々と凶刃の元に倒れていく。
最後の一人が倒れた時、剣が下ろされた。
剣を握る手は返り血で濡れている。
すると、人々から流れ出る血が動き、魔方陣の周囲に集まり出す。
魔方陣の中に、ひとりでに集まった血がどんどん吸い込まれていく。
血が残らず全て吸い込まれると、魔方陣を描いている赤い線や文字や紋様が、浮き上がるように輝き出した。
地下室中を、魔方陣から発せられた赤い光が照らし出す。
その光が一瞬強く輝き、次の瞬間、光が消えた魔法陣の中央に人が立っていた。
その人物はゆっくりとこちらを見る。
室内が暗いため、顔はよくわからないが、全身黒一色の衣装に、金の豪華なアクセサリーを数多く身に着けていて、スラリとした体型で、背がとても高く見える。
頭の側面からは、牛のように横に張り出した太い二本の角。
その人物はおもむろに口を開いた。
「我を呼び出したのは、そなたか?」
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