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目が覚めた。
時計を見ると、もうすぐ起きなければならない時間だった。
この夢を見た後は、決まって気分が悪い。
幼い頃から繰り返して見る夢。
最初はあまりに怖くて、よく泣いていた。
目が覚めてからも、絶対に忘れない夢。
最近はあまり見ていなかったから、随分久しぶりだ。
私は目を擦りながらベッドから起き上がる。
隣に寝ている夫は、まだよく寝ているようだ。
私はそっと寝室から出て、キッチンへ向かった。
朝食の支度をしていると、夫が起きてきた。
私は早川伊知乃(ハヤカワイチノ)、専業主婦をしている。
夫の亮太(リョウタ)は会社員だ。
家族構成は、あと息子が一人いて、住まいは建て売り一戸建て住宅、ローン残ありの、ごく普通の一般家庭だと思う。
「おはよう」
「おはよう、新聞は?」
「そこにあるよ」
夫はダイニングテーブルの指定席に着くと、早速新聞を広げ出す。
「はい、食べてね」
私はベーコンエッグとコーヒーを差し出した。
チン、と音がして、オープントースターでパンも焼き上がる。
「ねえ、またあの夢久しぶりに見ちゃった」
私は夫の分のトーストにバターを塗り、差し出しながら言った。
「何?いつもの怖いファンタジーな夢?」
「うん…小さい頃はよくわからなかったけど、たくさん人を斬ってるの、多分私なんだよね…」
そう、夢の中で剣を握っているのは、なんとなく私自身だと感じるのだ。
コーヒーを飲みながら聞く夫に、私は答える。
「へえ…
もしかして、中世ヨーロッパとか、そんな感じの場所なのかな?
伊知乃の前世だったりしてな。
今日行くんだろ?
ついでに聞いてみればいいじゃないか」
「うん…」
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