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カッコよくなって、彼女ができたりして、紹介されるようになっても、それはそれで複雑な母心なのだが。
「おい、その頭を何とかしたらどうだ」
あまりのボサボサさにか、夫が見かねて言う。
「ん…そのうち」
「ずっと、そのうち、じゃない」
私も夫に便乗して言った。
「朝からうるさいなぁ」
竜也は呆れた口調で返す。
「竜也が全然切ろうとしないからでしょ。
もう少しキチンとできないの?」
「はいはい」
私がまだ言おうとするのを軽くあしらって、竜也はコーヒーを飲みながら広告をめくりだす。
「はあー…もういいよ」
息子の態度には腹が立つが、最近は何を言ってもこんな感じなので、私は説教をするのをあきらめた。
私も朝から息子と言い合いをする気力がなかったのも事実だ。
「竜也、お前母さんに反抗ばかりするなよ」
夫が少し厳しく言う。
夫は普段温厚だが、怒らせると怖い存在になる。
竜也も、その事だけは身に染みて理解しているため、少しだけ肩をすくめる。
「へいへい」
わかったのかわかっていないのか、という返事を返して、広告に目を通す事に集中し始めた。
夫はため息をついて席を立った。
「今日はいつも通りの時間に帰るよ」
「うん、いってらっしゃい」
「行ってきます」
夫を玄関で見送って、キッチンへ戻ると、竜也は食べ終わって身支度をしに行ったみたいだった。
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