始まりはある日突然に、というものですよね

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私が食器を洗っていると、ドタドタと竜也の走る音が聞こえてくる。 「俺、今日は泰士(タイシ)と寄り道してくるかも」 竜也はキッチンに顔を出して、私に告げる。 「わかった、行ってらっしゃい」 「行ってくる」 竜也を見送って、二人が出かけた家は、急に静かになった。 竜也は私に反抗しながらも、毎日必ず自分の予定を告げてから出かけていく。 そういう所が、いつも言うことを聞かなくて腹が立つのだが、憎めない。 これがいつもの日常だ。 今日、この日常を覆す出来事が起こるとは、この時は気づいていなかった。 私は時計を見ながら家事を終わらせてから、出かける支度を済ませて、家を出た。 駅に向かって久しぶりの電車に乗り、結衣と待ち合わせた場所へ向かう。 「伊知乃久しぶりー」 待ち合わせ場所である、駅の改札出口前に先に着いた私が、行き交う人々をぼんやりと眺めてしばらくしていると、友人の結衣が小走りでやってきた。 「待った?」 「ううん、さっき来たところだよ」 「そう、じゃあ行こうか」 結衣は早速占い師の所へ向かうために、先に歩き出した。 私も結衣に追いつき、並んで歩く。 「でも本当に占いが好きだよね? これで何回目になることか…」 「だって、転ばぬ先の杖というか… 何だかワクワクしない? わからない未来とか、知らない自分の一面とかが、わかっちゃうんだよ!」 結衣は力いっぱい、私に反論する。
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