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夫がキチンと働いて家計を支えてくれているお陰で、私は専業主婦ができているし、住宅ローンも順調に返済して、へそくりも貯められている。
息子は一人っ子だから多少ワガママに育ってしまったが、手が着けられない程荒れている訳でもない。
専業の分、手抜きが許されないような気がして、主婦業も楽ではないと思うが、あれ?、私って幸せ者じゃない?と思っていると、結衣が小さなビルの前で立ち止まった。
どうやら着いたようだ。
「予約の時に、ここのビルの地下二階と言われたから」
そのビルは、一階は居酒屋が入っており、二階には脱毛サロン、三階から上はよくわからない会社が入っているような建物だった。
地下に続く階段を降りて行くと、地下一階は洋食屋で、その前を通過してさらに降る。
「お昼はここで食べてもみてもいいかもね」
「そうだね」
占いが終わったら、ちょうど昼時なので、私は結衣の提案に同意して頷く。
階段が終わって小さなホールの向こうには、黒い扉があった。
扉の中央に【前世占い・マルリス】と書いてあるプレートがぶら下がっている。
どくん
そのプレートを見た瞬間、なぜか動悸がした。
私はもう一度プレートを見る。
どくん
まただ。
【前世占い】ではなく、【マルリス】という文字に反応して動悸が起きる。
訳がわからず、急にドキドキしだした心臓を鎮めるために、私は深呼吸をした。
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