始まりはある日突然に、というものですよね

8/41
前へ
/538ページ
次へ
夫がキチンと働いて家計を支えてくれているお陰で、私は専業主婦ができているし、住宅ローンも順調に返済して、へそくりも貯められている。 息子は一人っ子だから多少ワガママに育ってしまったが、手が着けられない程荒れている訳でもない。 専業の分、手抜きが許されないような気がして、主婦業も楽ではないと思うが、あれ?、私って幸せ者じゃない?と思っていると、結衣が小さなビルの前で立ち止まった。 どうやら着いたようだ。 「予約の時に、ここのビルの地下二階と言われたから」 そのビルは、一階は居酒屋が入っており、二階には脱毛サロン、三階から上はよくわからない会社が入っているような建物だった。 地下に続く階段を降りて行くと、地下一階は洋食屋で、その前を通過してさらに降る。 「お昼はここで食べてもみてもいいかもね」 「そうだね」 占いが終わったら、ちょうど昼時なので、私は結衣の提案に同意して頷く。 階段が終わって小さなホールの向こうには、黒い扉があった。 扉の中央に【前世占い・マルリス】と書いてあるプレートがぶら下がっている。 どくん そのプレートを見た瞬間、なぜか動悸がした。 私はもう一度プレートを見る。 どくん まただ。 【前世占い】ではなく、【マルリス】という文字に反応して動悸が起きる。 訳がわからず、急にドキドキしだした心臓を鎮めるために、私は深呼吸をした。
/538ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1751人が本棚に入れています
本棚に追加