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「君はいいね」
ふっ、と、先程より寂しさを強めた笑みで彼は言った。つられて私も寂しくなるような笑みだった。
「私は歩けないから。だってほら、足がないんだ。どこかでなくしてしまったんだよ多分。いくら探せど見つからないんだ。だから、どこにも――」
吐き出された息に、命なき鉱物の臭いを感じた。世界の終わりがそこに見えるような気がした。だから私は、彼から目を反らし、遠い空を見た。そこに見えたのは大学の尖塔、そして白と黒、即ち鳩群れと鴉群れ。塔を掠めるように飛んでそして。
ぱた、ぱたり――
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