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しかしそこで、んん?、と違和感を覚え、気づいた。
『死体は瞼を閉じられないぞ』
と。
気づくや否や、真っ逆さまに墜ちるような感覚と一気に加速して垂直に昇るような感覚、その二つが同時に押し寄せるような奇妙な感覚がして。
晨はぱちりと目を開けた。飛び込んでくる白い光。眩しい。
と光の中に浮かぶ影。微笑む顔。
「旭、もう起きたのか」
旭、と呼ばれた刹那、思い出す。、自分が今は「晨」でなく、「旭」であることを。「旭」の前が「晨」であったことを。「晨」が誰に殺されたかを。
ああ、私はこの男の娘、そしてかつて「私」であった存在は、この男の手で、首を絞められ殺された。知ればこの男は何を思い何をするであろうか……。まぁ、わざわざ知らせようとは思わないが……。
娘がそんなことをぼんやり考えているとは露知らず、男は、その柔らかい頬をふにふにとつついて戯れていた。
「だぁー」
「だぁ、じゃなくて、父さま、と言ってごらん」
「あぅ。ぶー」
「ふふ、そうさそうか、まだちぃと難しいか」
「うー」
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