旭と晨

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 さて、緩やかな風が吹く。父は娘を膝に座らせて抱え、抱えられたその赤子の目は遠く、蒼い蒼い空を見る。  旭は晨ではない。だが晨の見たあの夢は、旭にとっても現実的で。飛翔の余韻は、未だにじぃんと体の奥に。  しかし、だ。 旭は晨のように、もう一度飛びたいとは思わない。空の蒼と白い雲は美しく、風は心地好く。けれどそれらより、父の大きく頼もしい手を、膝の温もりを選びたい、そのために地上に在りたい、と旭は思う。  旭は晨、晨は旭だ。しかしイコールでは結べない。旭は旭の望みを持ち、それは晨の望みではない。  旭は思う。  私は私、晨は晨なのだ、と。  それにしても、あの夢の中、晨の見たあの少年は誰だったのだろう? ふと気になって思い返してみたが、やはり誰のものだかわからない。現実的ではっきりした夢の中で、そこだけ薄ぼけてわからない。  まぁ、いいか。  うとうとと眠くなってきて、旭はそっと目を閉じた。
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