Humpty

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 目覚めると、既に夜。  開きっぱなしだった窓から室内に不法侵入したのだろうか、ベッド脇に『羊羮を履いた赤い足』がいて、バレリーナのようにくるくると踊っていた。怒鳴って追い出そうかと一瞬考えたが、やめた。『羊羮を履いた赤い足』を怒鳴ったりしたらかわいそうだからだ。  『羊羮を履いた赤い足』は、自分が踊るのにぴったりの舞台を探して常に躍り歩いているような生き物であって、何も金を盗もうとか、僕に危害を加えようとか考えていたわけではないのである。 彼らは「楽しく踊りたい」、ただそれだけの、無垢な子供のように純真だ。そして、怒鳴られると怯えてガタガタ震えたり、ぺたんと座り込んで動けなくなったりする。だから、怒るのはちょっと。
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