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ひとしきり踊ってからお辞儀した『羊羮を履いた赤い足』に、ぱち、ぱち、と拍手を贈ってやったのとほぼ同時に、サイドテーブルのラジオが乾燥注意報を告げた。
先月からずっと壊れて沈黙していたくせに、いきなり喋り出すとは、不思議なこともあるものだ。
そのラジオのスイッチを切って窓の外をふと見れば、空にあるのは何となくぱさついた、金色の偽月。
おそらくは、本物が昇るのをさぼってサイパン旅行にでも行ってしまったために、ピンチヒッターで出てくるはめになったのだろう。まったく、近頃の月ときたら。やれやれ。
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