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しかし今夜の偽月は本当によくできていて、綺麗だな。
そんなことを考えていたら、いつの間にか外に出ていた。どうも偽月の光にふらふらと誘われたらしい。
外に風はなく、空気は生暖かい。そしてぱらぱらと、上から金粉が落ちてくる。
多分、偽月のかけらだろう。美しいとはいえど間に合わせ。乾燥で表面がひび割れ砕け、粉になって降ってきているのだ。前にも一度あった。
ただ、その時よりは粉の降り方が穏やかだ。偽月も日々改良され、進化しているのだろう。
ふと思い付き、舌を出して、降る粉をその上に載せてみた。
どこか懐かしいような、安っぽいその甘さは、駄菓子屋の粉ジュース。
と、辺りにぼーん、ぼーんと柱時計の音が響いた。柱時計などどこにもないのに。
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