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そんな屋上の一番奥、落下防止の柵のすぐ手前に、片足のない男が一人、地べたにぺたんと座り込んで下を向いて、手探りで何か探しているようであった。
それは喪服のように上質な黒絹の服を着た男だった。
ズボンの片端から覗く、一本だけのその足には靴も靴下も。つまりは裸足。
その足は蝋人形のそれの如く、白く作り物めいて不気味で、しかしながら、妖しげで独特な、一種の女性美と呼べるような美しさを有しているように見える。
だが、彼の所作その他に女性らしさというものは感じられない。かといって男性らしさが感じられるわけでもない。性や年齢、そういったものを初めから持っていない、そのような風情だ。
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