第1章

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12月24日 クリスマス・イヴ クリスマス当日までほんの僅かな時間を残し「plage」では、最後の客の接待をしていた。 「今日は、クリスマス限定カクテルを聖にプレゼントするぜ?」 「それはそれは… 寒空の中来た甲斐があったなぁー。 所で、今宵も盛況だったかな?」 「盛況も盛況!店の主としては、クリスマスシーズンは稼ぎ時ってもんだ! ………しかしなぁー“俺自身”としては、複雑な心境なわけで。」 「はて?」 盛況を喜ぶマスターとしての玄生とは裏腹に、素の玄生はどこかぐったりとやる せないような表情だ。 「店を見渡す限り、恋人同士のカップルだらけ!!!仲良くちちくりあいやがって!!羨ましいな畜生ーー!!!!」 玄生の悲痛な叫びに、聖は思わず吹き出すようにお腹を抱え笑ってしまった。 「……まぁまぁ、良いじゃないか。幸せそうな恋人同士、こちらも心が温まるというもんさ。」 「俺は、モヤモヤしか残らねぇ!!」 「……そういうものかな?」 「そういうもんなんだ!!クリスマスと言ったら恋人!人肌が恋しいのなんのって!」 「そうか……ふむ。 人肌が恋しい…とまではいかないが… やはり誰かと一緒に過ごすクリスマスは良いな、憧れるな…と思ったものだ。」 ふと、聖は昔の記憶を思い出すかのように睫毛を伏せる。 「…聖?」 「すまない…。 ほんの数年前まで、誰かと聖夜を過ごすということなど、到底考えられなかったものでな。私にクリスマスなど無いに等しかったのだ。」 どこか、寂しそうに、切なそうに聖は微笑む。 「おっと!湿っぽいのはいかんな! ……そろそろ、帰るとしよう。」 そそくさと、荷物をまとめ、椅子から立ち上がり去ろうとする聖。 →
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