涙のあと

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しばらく部長を交えて三人で話していたが、明日も仕事がある。 部長が仕切って切り上げた。 先に寝室に入る部長を見送って二人でリビングを出る。 藤森が先に部屋のドアに手を掛けて、 俺に笑顔を向けて言ったんだ。 「成瀬さん、おやすみ。」 「…ああ。」 布団に潜り、眠りに就くまで、 俺の頭の中には藤森の 「おやすみ。」が 繰り返し響いていた。 「おやすみ」なんて挨拶を ここ何年もしていなかった。 藤森におやすみと言われた時、 俺も「おやすみ。」と、 返せばよかったなと、 少し後悔していた。
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