夕闇の刻 、戦場 (いくさば) にて 。

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「先にヤらなけりゃ、殺られるぞ」 戦場から陣内の天幕へ戻った少年に、養父は言った。 「ヤられてないだろ。今日はもう三十人ほど片付けた」 「一昨日(おとつい)より少ねえじゃねーか。さっき何見てた?」 「あ?」 「空、見てたろ。敵斬りながら。ああいう油断が隙を作る。怪我したくなかったら戦の最中に空なんぞ見てねぇで、前から向かってくる奴だけ狙え」 「……わかってる」 少年はムッとした顔で答えた。 あれは星が…… あのとき星が流れたような気がして。 それでつい、見てしまったのだ。 流れ星。 流星を見たのは初めてだったから。 ───そういえば、 この国じゃ天の月星に祈り、流れる星にまでも願い祈ると聞く。 阿呆らしい。 と、少年は思った。
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