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その時、かすかに子供の鳴き声が聞こえ辺りを慎重に探す。
すると首の切られた男女の死体の下からすすり泣く声が聞こえてきたので慌てて死体をどかす。
折り重なっていた死体の中から白髪の少女が膝をつき踞っていた。
「君、大丈夫かい?」
声をかけた瞬間体がピクリと反応し、ゆっくりとこちらを見る。
涙で濡れた赤い瞳で私を写している。
私は驚いた。
少女の瞳の色に驚いたのではなく、私自身の姿にー…………。
何なんだー………この姿は?
「あはっ…ははは………」
なんの冗談だろう?
私は“人間”であったはずー………。
自然と顔に触れる。
人間とは違う口。
人とは違う耳。
人とは違う肌触りー…………。
楽しいわけでもないが自然と笑いだし、そして膝から崩れ落ち膝をつき血と泥水でおおわれた地面を見つめた。
するとさっきの少女が心配になったのだろう。
不安そうな瞳で私を見ていた。
「ワンちゃんも大切な人が居なくなっちゃったの?」
「えぇー………まぁ………そうですね。
皆居なくなっちゃいましたね」
「私もねー………お母さんとお父さん、友達も近所のおばちゃん、おじさん、お兄さんとか居なくなっちゃったのー………」
「他に知り合いや親戚とかは?」
少女は首を横に振る。
「そうかー………なら、私と一緒に暮らさないかい?」
何故かその時そんなことを言ってしまった。
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