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「何で自分だけ・・・?」
流浪から『派遣組織』の一員として、生きていくことに決めたハシブトガラスのキィオも遂に切羽詰まってしまった。
遠くに『派遣』されて、えっちらおっちら。
翼が疲れ、気も疲れたその『派遣先』の粗大ごみ捨て場で、早速担当ガラスのメンバーの如何にもふてぶてしい雌ガラスのワゼに、キィオは罵倒されていた。
「ねえ、何と言ったら覚えるの?」
他の『派遣』カラスは、翼とり脚とり教えているのに何故かキィオだけは、
「お前は何をやっても駄目だ!」
「お前はカラス語解るの?」
「やる気無いなら早く帰って!」
カラスのキィオはもうウンザリしていた。
キィオは嘴を噛み締めて耐えた。
何故なら、ここしか『派遣先』は無かったからだ。
カラスのキィオは、そのメンバーカラスのワゼに執拗にネチネチとつけこまれるうちに、作業終了となった。
散々だった。
ゴミの配置等少しの『ミス』を、そのワゼに指摘されては、キィオの作業を全部見直させられて、周りの顰蹙を買ってしまったからだ。
・・・何もそこまでしなくてもいいのに・・・
・・・何処まで自分を信用しないんだ?ちくしょう・・・
すっかり、何もかも自信を失ったカラスのキィオは 項垂れて夕暮れの街を通って、通くの住み処へ帰った。
・・・またあの遠方に行くことになったら、自分はまた・・・
壊れかけの巣にうずくまって、カラスのキィオは憂鬱な夜を眠れずにただ塞ぎこんでいた。
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