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出逢いは、寒い雪の降る日でした。 「こんな所に、一人で居るの?」 突然聞こえたその声に私は伏せていた顔を上げる。 「ぁな、たは?」 長らく誰とも話していなかったせいで上手く話せない。 「僕? 僕は栄太郎。 ねぇ、行くところがないんならおいで……」 そう言って差し出された手に、私は縋り付いた。 「……た、たか。 温かい……」 その人は私を背負ってくれた。 今は雪が降っていて寒いはずなのに、栄太郎は私に羽織を掛けてくれた。 ***** 「着いたよ。 此処が松下村塾。君を連れて来たかった所」 「しょうか…そんじゅく?」 聞いたことがなかった私は栄太郎に聞き返す。
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