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「雪華!
一緒に町に行かねぇか?」
「別に……良いですが」
蛤御門の変から数週間。
原田はあれから私をよく町に誘うようになった。
その度に私は同じ返事をし、一緒に出かけていく。
「今日はどちらへ?」
「お前の好きな所へ」
「……」
毎回繰り返されるこの会話も何度目だろうか。
「ほら、どこに行きたいんだ?」
原田はニコリと微笑みながら頭を撫でてくる。
……前までは違和感があったけど今ではこれが当たり前になりつつある。
私も原田に頭を撫でられている時だけは何故か素直に言うことを聞いてしまう。
「なら、甘味処に。
そこに……行きたいです」
「よし、分かった!
なら四半刻後に門の所に来てくれ」
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