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「何で、泣いてるんだよ」
その言葉に驚きを感じつつも慌てて手を頬に運べば、濡れていた。
「ち、違っ……これは、」
言い訳をする間にも涙はとめどなく溢れてくる。
どうしようもなくなり下を向いた時、フワリと暖かいものに包まれる。
原田の腕の中に居た。
「なぁ、雪華。
お前の本心を聞かせてくれないか?」
原田の優しげな声と腕の温もりがため込んでいた感情を壊した。
「っ、私の、本心は……好きです。好きですよ、貴男が!
だけど私は、本当は倒幕派の者なんです……長州の人間なんです!!
幕府に大事な人を……師匠と親友であり兄である人を殺された恨みで入隊したんです!
復讐の為に入隊したんですよ!!」
私の告白に原田の体が強ばったのが分かった。
あぁ。
私はもう帰る場所が無い。
バラしてしまったから藩邸には帰れない。
屯所にも、隊規違反で帰ったら切腹。
……どちらにせよ、終わりか。
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