妖怪プリンババア

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時間というやつは無限のようで、有限だと感じることがある。私の人生はとてもゆっくりしたようで、急いでいたようでどっちつかずだけれど、幸せだと思うことができる。 夫と出会って、息子ができて、孫が生まれた。まだ、幼いし別居しているので孫と出会えることは少ないが、出会うたびに成長していく姿を見るのは嬉しいものだ。 スーパーで買ってきたプリンの材料が入った袋をカシャカシャと揺らしながら道の隅っこを歩きながらもごもごと口を動かす。そのかわりとは言わないけれど、私は年老いていく。当然と言えば当然で、と、とりとめのない思考をめぐらせてると目の前からトラックが走ってきていた。いや、普段、走行しているより早い。暴走と言っても差し支えないほどに、そのトラックがまっすぐ私に向かって突っ込んできた。あまりにも唐突な出来事に目の前が点になる。手足を動かして避けようとするが老いた身体は意志に反して動いてくれない。蛇に睨まれた蛙と言えばいいのかもしれないが、瞬く間にトラックが迫り、眩い光に包み込まれるーーーー痛みにこらえるよう 目をギュッと目をつぶったが全く痛みがやって来ない。恐る恐る目を見開いてみるとそこにはトラックはどこにもなくなって、見ている景色もどこか懐かしさを感じる。まるで、数十年前の景色のようになんて、そんな怪談話のようなことを考えながら歩いていくと、冗談混じりに考えたことが現実味をおびてくる。 目の前に広がっている景色が様変わりしている。一つの街だって数十年たてば様変わりしてしまう。年老いた身体でも、まだボケてはいないので変化がところどころに目に付く。 自分は死んでしまったんだろうか、走馬灯のようなもので私は過去の出来事を覗き見ているのだろうか、不安よりも好奇心がうずく。怪談話が好きで、よくそういう話をするけれど、私はそういった体験をしたことがない。できることなら一度、体験したいと思っていた。 年老いた身体を、急かすように動かして、駄菓子屋に向かう。やっぱり憶測は正しかった、そこにあったのはまだ、真新しい駄菓子屋だ。子ども達の姿はないのは学校の時間だからだろう。 私は好奇心に任せて、扉を開いた、チリンチリンと鈴の音色と共にお菓子の匂いがする。駄菓子、うまい棒、チューインガム、アイスの入ったクーラーボックス、風船やプラスチックの水鉄砲。数十年たっても変わらない光景がそこにはあった。
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