新月

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「望月くん、やんな」  初対面であるはずの女から名指しで声をかけられ、夕弥は面食らってしまった。  相手は自分のことを知っているというのに、自分は相手の名前もどこで会ったのかも思い出せず、咄嗟に怪訝な顔をしていた。 「何で知ってるん……ですか」  そんな夕弥に、女は少しがっかりした様子で微笑んだ。 「ヒドイなぁ。憶えてないの?あたしのこと」  彼女はそう言って、真っ直ぐに夕弥を見つめた。  突然妖しい目つきに変わった女に、夕弥はゾクッとした。  大きめのフワッとした白いブラウスに紅い唇が印象的だった。  ショートカットでも色っぽく見えたのは、白いうなじのせいだろうか。 
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