新月

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 その夜、夕弥は一人バーで飲んでいた。  夕弥は人付き合いが苦手で、社会人になってからは特に、誘われることがない限りは一人で飲むことが多かった。  その方が気楽で、性に合っていた。せっかくの好きなお酒を、気を遣って飲むのは嫌だったのだ。  だから、知り合いらしい女に声をかけられたのには落胆した。  名前を知っているということはやはり面識があるのだろうか。  隣に腰かけた女の横顔を凝視して、必死に微酔いの記憶を辿る。 「そんなにジロジロ見られたら恥ずかしいやん」  前を見たまま、女はくすりと笑った。 「あ、すみません……」  夕弥は慌てて視線を手元のグラスに移した。  気まずそうにグラスも汗をかいていた。
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