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「望月くん、一人?」
「そうですけど」
戸惑ったままの夕弥に構わず、女は話しを再開した。
「へー。一緒やな。おひとりさま」
もう既におひとりさまではない気がしたが、夕弥はそうですねと答えておいた。
「あの、失礼ですけど、名前教えてもらってもいいですか」
やはり、自分だけ相手を知らないというのは不気味な気がして、夕弥は訊かずにはいられなかった。
「ああ、あたし?朝生澪。っていうか敬語止めてよー。そんな年上ちゃうで」
アソウミオ。暗号みたいに謎は深まった。フルネームを聞いても、脳みそは作動しない。
「どこで会うたんかな」
思い切って訊いてみた。本当に丸ごと彼女の記憶がない。
「あー。それはナイショ。頑張って思い出して」
ニコッと笑った後、朝生澪は黙ってグラスを傾けた。
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