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隣同士で座ってはいるものの、それから澪は口を噤み、夕弥も何も言わなかったので相席も同然だった。
夕弥は拍子抜けしながらもホッと胸を撫で下ろしていた。
「さあて、そろそろ帰ろっかな。望月くんは?」
三十分ほど時間が流れただろうか。澪はグラスに残ったウーロンハイを飲み干すと、そう言った。
「ほな俺もそろそろ……」
「そう?ほな一緒に帰ろ」
不可思議な誘い文句を残し、少し高めのスツールから降りると、澪は会計に向かった。
黒のタイトスカートから覗く、網タイツにハイヒールという後姿が、男である自分の目を奪っていることに夕弥は気付いていなかった。
だが、店にいた男たちがチラチラといやらしい視線を投げていることにはすぐに気が付いた。
華に誘われる蝶のように、甘い澪の香りを追って夕弥も店の外に出た。
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