新月

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「おい、望月。こないだの資料できてるか?」 「あ、はい」  翌日から、夕弥は何事もなかったのかのようにいつもの生活に戻った。  同じ朝、同じ電車、同じ会社。何の変哲もない一日のはじまり。  商社と言っても、総務事務をしている夕弥にとっては毎日デスクワークばかりで、国内外を飛び回っている営業のような刺激はなかった。  それを望んで総務部を選んだはずだったのに、花もなく出世も遅い部署にいることに夕弥は劣等感を持ち始めていた。 「ほな、その資料を新城君のとこへ持って行ってくれ」 「はい……」  取引先のメーカーに渡すデータをまとめた資料を、部長の指示で直接、新城琢磨に手渡すことになった。
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