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「ん、まあ……。そんなところかな」
予想外に渋い反応に首を傾げる。
「在学中はお互いの存在を認識してる程度で、つるむようになったのは卒業した後だったかな。昔過ぎて忘れた」
どこか昔を懐かしむような含み笑いを見せる衛くんに私までもがつられて頬が緩む。
ハッキリとは言ってはくれないけど、衛くんにとって彼が大切な友人であるということはよく分かった。
「そういえばお腹空かない?軽く何か作ろうか?―――て、殆ど何も入ってなかった……」
座ったばかりの衛くんが立ちあがり冷蔵庫を覗き込みだす。
「大丈夫。私は、お店で少し食べたし。衛くんの方が、お腹空いてるんじゃない?」
「や、俺も大丈夫。合間に食べたから……」
冷蔵庫を閉め、私の隣に腰を下ろすと、飲みかけのコーヒーを飲みだした。
―――会話が、ない……
お互い黙々とコーヒーを飲み続け、衛くんの1LDKの部屋に重い沈黙が漂いだす。
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