世界の違い

28/42
前へ
/369ページ
次へ
なのに。彼女はそんなささやかな時間も待ってくれないらしい。 「蘭沢さん!」 その高い声に、上がりかけた機嫌が急降下した。 「おはよ、田中さん」 「おはよう、蘭沢さん! あのね、私、統也さんと話したくって!」 ――え? 予想外の言葉に、そっと統也を覗き見る。 なのに……怒るかと思っていた統也は、驚くくらい表情を変えなかった。 それどころか。 「何だ」 ほんの少しの差だけど、声も明るい。 まるで楽しんでるみたいに。 不審に思っている間に、2人の間で会話は進んでいく。 「あの、蘭沢さんと結婚してるんですよね?」 「ああ、そうだ」 「じゃあ、ちゃんと蘭沢さんのこと好きなんですか?」 「当たり前だろ。愛してるから結婚したんだ」 「無理矢理の政略結婚とかじゃないですよね!?」 「んなわけないだろ。佑だって俺のことを世界一愛してる」 「本当に?」 「昨日だって一日家に籠って愛し合ったんだからな。 何ならベッドの上での会話全部言ってやろうか? 俺のこと愛してるとか、俺の髪をかき上げる仕草が好きだとか……」 「統也っ!!」
/369ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15030人が本棚に入れています
本棚に追加