15030人が本棚に入れています
本棚に追加
なのに。彼女はそんなささやかな時間も待ってくれないらしい。
「蘭沢さん!」
その高い声に、上がりかけた機嫌が急降下した。
「おはよ、田中さん」
「おはよう、蘭沢さん!
あのね、私、統也さんと話したくって!」
――え?
予想外の言葉に、そっと統也を覗き見る。
なのに……怒るかと思っていた統也は、驚くくらい表情を変えなかった。
それどころか。
「何だ」
ほんの少しの差だけど、声も明るい。
まるで楽しんでるみたいに。
不審に思っている間に、2人の間で会話は進んでいく。
「あの、蘭沢さんと結婚してるんですよね?」
「ああ、そうだ」
「じゃあ、ちゃんと蘭沢さんのこと好きなんですか?」
「当たり前だろ。愛してるから結婚したんだ」
「無理矢理の政略結婚とかじゃないですよね!?」
「んなわけないだろ。佑だって俺のことを世界一愛してる」
「本当に?」
「昨日だって一日家に籠って愛し合ったんだからな。
何ならベッドの上での会話全部言ってやろうか?
俺のこと愛してるとか、俺の髪をかき上げる仕草が好きだとか……」
「統也っ!!」
最初のコメントを投稿しよう!