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「お前が言ったんだろ。昼間にお前を見つけたら俺の女になると」
絶対に見つからない、そう思ってた。
夜の女王の正体はマスターしか知らないし、龍皇も裏センターの人間も私と喋っても気づかなかった。
行きも帰りもタクシーを乗り継いで、尾行には気をつけていた。
それなのに、今何と言った?
「嘘……」
「見つけたぞ」
さっきまでの雰囲気が嘘のように、神田統也は優しく囁いた。
「まさか公衆の面前であんな啖呵を切っておいて、今更なしなんて言わないよな?
そんなことしたら夜の女王としての沽券に係わるもんな?」
やくざとは思えないほど、優しく甘い説得のような言葉。
「お前は俺の女になるんだ」
――彼の、女……
まるで洗脳のように脳に言葉が響いて、自然に首が動く。
我に返ったのは小さく頷いた後だった。
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