第1章

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学校が終われば、私は一目散に家に帰る。 「ただいま」 返事はないと知りながらも、つい言ってしまうのは癖かもしれない。 もう一人暮らしも弘山も、2年目だっていうのに。 一瞬過ぎった寂しさに蓋をして、六畳一間の部屋にあがった。 夜の準備は、朝よりは簡単だ。 メイクを全てとって、鏡を見る。 努力と若さの甲斐あって、白くてハリのある肌には何もしない。 グレーの粉で眉毛を整え、黒のラインを細めに引く。 ラメの入った紅のアイシャドウを薄く塗り、唇には似た色のルージュで妖艶さをプラス。 用意していたミニワンピースに着替えて、最後にウィッグを取れば準備完了。 鏡に映るのは夜の私。 『ラン』は悪い意味でも有名になってしまったから、ブログも閉鎖し、バイトも辞めざるを得なかった。 代わりに生まれたのが『私』。 長い黒髪には天使の輪が戻り、黒のシンプルなワンピースを着こなす姿は十代には見えない。 「今夜も綺麗よ、リン」 鏡の中の『私』が微笑んだ。
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