第1章

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今私が通っているのは四か月前まで通っていたセンター街から一駅、多くの煌びやかな店が立ち並ぶ通称『裏センター』だ。 夕方六時ともなると、これからの時間に想いを馳せる多くのお客と、店に客を呼びこむキャバクラ嬢やホスト、ホステスで賑わっている。 タクシーを降りると、そんな呼び込みの一人と目が合った。 「女王だ」 その言葉に反応した多くの人間がこちら振り向いた。 人は権力と名声の下にひれ伏す。 この裏センターでは珍しい高級Bar『LUNA』。 そのVIPルームに突如現れたバーテンダーは多くの有名人を虜にした。 今では現職大臣や警察上層部、裏世界の権力者までもがお忍びで通っているという。 その噂が駆け巡った瞬間、LUNAのVIPルームを求める人間は殺到した。 でも、VIPルームには決まりがある。 VIPルームは毎日貸切。 バーテンダーが許した者だけが入れる。 席料は一日十万円。 六時に現れるバーテンダーは、遅くとも十二時にはこの街を去っていく。 この決まりが、さらに人々の欲をかき立てた。
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