14957人が本棚に入れています
本棚に追加
今私が通っているのは四か月前まで通っていたセンター街から一駅、多くの煌びやかな店が立ち並ぶ通称『裏センター』だ。
夕方六時ともなると、これからの時間に想いを馳せる多くのお客と、店に客を呼びこむキャバクラ嬢やホスト、ホステスで賑わっている。
タクシーを降りると、そんな呼び込みの一人と目が合った。
「女王だ」
その言葉に反応した多くの人間がこちら振り向いた。
人は権力と名声の下にひれ伏す。
この裏センターでは珍しい高級Bar『LUNA』。
そのVIPルームに突如現れたバーテンダーは多くの有名人を虜にした。
今では現職大臣や警察上層部、裏世界の権力者までもがお忍びで通っているという。
その噂が駆け巡った瞬間、LUNAのVIPルームを求める人間は殺到した。
でも、VIPルームには決まりがある。
VIPルームは毎日貸切。
バーテンダーが許した者だけが入れる。
席料は一日十万円。
六時に現れるバーテンダーは、遅くとも十二時にはこの街を去っていく。
この決まりが、さらに人々の欲をかき立てた。
最初のコメントを投稿しよう!