第1章

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弓弦「だからあたしは、あたしの中では最強じゃない。いくら周りが天才だなんだって騒ぎ立てたって、あたしにはそんなこと関係ない。あたしはあの人を越えてない、あたしはあの人を越えないといけないのよ」 楓「…、だから君は、あんな無茶な戦い方をするんだね。身を削る、というよりも、命を削るような戦い方を」 弓弦「だから、知ったような口をきくなって言ってるでしょ。あんたにあたしのことは分からない。少なくともパイロットとして機巧に乗ってもいないやつに、理解されるような薄っぺらではないつもりよ。戦い方がどうこう以前に、乗るだけで命削ってんのよ、こっちはね」 ???楓に冷たい眼を向けて、弓弦は薄く笑う。 ???皮肉るような、冷たい声。 弓弦「のほほんと安楽椅子に座ってるだけのお荷物なんかには、死んでも分からないわ」 楓「君が、そうとしか思えないのなら…、君にとっては永遠にそうなんだろうね」 弓弦「そうね、永遠にあんたはあたしの足手まとい、あたしの中では永久にそれは変わらない。だからもう言うまいと思ったけど最後にもう一度だけ言ってあげるわ。あたしにはあんたは必要ない、これは変わることはないのよ。見解の相違が気に入らないってんならら、乗ってくれなくてけっこうよ、もともと望んじゃいないんだからね」 楓「僕だって、そうできればいいと思ってるさ」 弓弦「それならそうしてくれたほうが、あたしにとってもあんたにとってもいいと思わないかしら? それくらいの損得計算は出来るで」 楓「それでも! 頭の中で何かが『乗れ』ってうるさいんだよ! 僕だって別に好き好んで乗ってるわけじゃないんだ!」 ???不意に出された大きな声に驚いて、弓弦は眼を丸くして楓を見る。 ???楓、自分で出した声に驚く。ばつが悪そうに眼を伏せる。 楓「僕にだって、分からないんだよ……。君は自分勝手で、わがままで、周りに合わせるなんて事をまったくしない。僕はそういう人間が大嫌いなんだ。でも、君を守れってうるさいんだよ…、君を死なせるなって、騒ぐんだよ……」 弓弦「…、あんた、それ、どういう」 ???楓の言葉に引っかかりを感じる弓弦。不安そうな表情。 ???しまったという表情の楓。内心、そんなことを言うつもりはなかったと思っている。 ???弓弦の言葉を遮るタイミングでドック内にサイレン。
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