だから私はグラスで遊べた

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「あのな兄ぃ、 私が好きなのはそんなドロッドロな絶望話じゃなくて、 もっとこう…スリルとサスペンスのある上で絶望的なやつとか、 都市伝説とかみたいなのに巻き込まれて絶望するやつが好きなわけよ。」 私は兄ぃがあんまりにリアルな寝とり物を書いてきたので反応に困ってしまった。 「うーんと…どう違うの?」 兄ぃはそんな複雑な気持ちも知らないで、 ニコニコしながら私の隣に、ベットに頬づえをして座りこんできた。 「ちょっと兄ぃ近い近い近いってば!!」 「あ、ごめんね?」 息が私にかかるくらい近づいてきた兄ぃを押し退ける。 兄ぃは昔から愚図でのろまで、 そこらへんに生えてる雑草をいきなり食べ始めたりする変態だったけど、 大人しかった。 私と兄ぃは仲も良かったし、喧嘩なんてのもしなかった。 いつも兄ぃが一歩引いてくれていたのだ。 私はそんな兄ぃは好きだった。 そんなチャランポランな兄ぃが今日は変だった。 「えと…とにかくその話生々しくない!? 童話みたいな始まりなのに描写がエグいのよ!! 生々しくと怖くない!?」 とりあえず兄ぃが怖かったので私は話をそらして空気を変えてみた。 「僕、歪ちゃんの感性がよくないからわかんないよ。 変なのー。」 「寝とりをニコニコしながら平然と書ける兄ぃには言われなくない。」 「えー。 でもこれで僕は 変な歪ちゃんと同じ変なのだよねー。」 「……うわーお。」 兄ぃは気持ち悪いくらい笑っていた。 いうか気持ち悪い。 誰がみても私に甘くて、甘すぎて脳ミソが溶けているようだった。 デレデレである。 昨日までこんなんじゃなかったのに、 急に私を好いてきた。 「兄ぃなんかへん!!」 私はチェストから私の好きな本を投げつけた。 「と…とにかく兄ぃ!! 今日はなんか変だからそれもって帰って!! 私の愛読書の都市伝説百科!! それみて次の話お願いね。」 なぜだか私は私にこう言われて、 悲しい顔をする兄ぃが怖かった。 「ま…待ってよ!! 僕はまだ…」 そう言って抱きつこうとしてくるのだった。 「兄ぃ!! お願いだからちょっと待って!! 明日、明日は沢山お話しするから、ね!!」 そうして私はその日兄ぃを無理矢理家に帰して、 一人で眠りについたのだった。
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