だから私はグラスで遊べた

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私はなんというか生まれつき心臓に病気、足に病気、腕に病気と病気をたくさん患っていた。 だから私は白い無菌室、 それもドアと小窓とベットとチェストしかない非常につまらない部屋で1日を過ごしていた。 毎日毎日同じ景色。 動くものといったら小窓から見える赤々とした薔薇の花が風に揺れる景色くらいだ。 本当景色は飽き飽きする。 『バカと天才なお姫様の話 ある日一人の召使いがいました。 その召し使いはとてもおバカでした。 しかし主人であるお姫様がとても頭がよく、 そんなカッコいいお姫様に召し使いは憧れていて…』 チェストの上にそんな言葉で始まる作り話の書いてあるルーズリーフの束があった。 乱雑で丸っこい字でかかれたそれは、 秀麗な姫に間抜けな召し使いが恋をするというずいぶんとありきたりな… 「ありきたりじゃなかった… これ最後に召し使い、大好きだった姫を隣国の王子に寝取られてんじゃん!!」 「うん、だってお姫様にこんな愚図が寄り添ったら可愛そうでしょ? 歪(ゆがみ)ちゃんはそうしたほうが喜ぶかなって!! でもこの召し使いはお姫様が幸せになったからすんごい幸せなんだよ!!」 「兄ぃ…考えが暗い。」 「歪ちゃん酷い!!」ドアから冴えない顔の青年、 私の兄ぃが入ってくる。 私、歪はこうして今日もつまらない1日を、大学帰りの兄ぃと兄ぃがわたしの暇潰しようにと書いた小学生向けのような物語で潰すのだった。
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