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「さあ、帰るか」
「うん。あ、ちょっと待って。
お花屋さん、まだ開いてるかな、寄っていい?」
駐車場に行きかけたところを、引き返して、
ホテル内にある、花屋を目指す。
閉店ギリギリ、片付けしていたところに飛び込み、
黄色いバラを一輪買った。
「良かった、買えて。お母さんのお花、忘れるところだった」
月命日に一輪。
お母さんが亡くなってからの、習慣だ。
「いつも思うけど、何で一輪なんだ?
普通は仏壇用の、束になったヤツだろ」
「お母さん、いつも言ってたの。一輪だけを、とことん
愛でてあげようって。だからこれでいいの」
「ふーん、なかなか粋な人だったんだな」
「そうね、お金の余裕も無かったし」
わたしを育てるのに苦労の連続で、やっと就職して
親孝行できると思ったのに。
あっけなく逝ってしまった。
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