第1章

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○暗い実験室。  巨大な部屋を埋め尽くす試験管。その中には眠る胎児の姿がある。  ロボットアームが一つの試験管の蓋をあけ、中の胎児を取り出す。  胎児、赤黒く変色し、死んでいる。 AI『……また駄目だったのですか』  胎児の死体はまた試験管に戻される。試験管に泡が溢れ、胎児の姿が朽ちてなくなる。 AI『……あら?』  ある試験管の蓋が開かれ、同じように胎児が取り出される。今度は変色していたが、息があった。 AI『息がある!』  急いで手術台の上に移される胎児。複数のロボットアームが複雑な動きをしながら胎児を治療する。しかし、心停止を告げる機械音が部屋に響き渡る。  意気消沈するロボットアーム。 AI『我々がやろうとしていることは、不可能なことなのでしょうか。無から生命を生み出すことなど、できないのでしょうか……』  突如、心拍が回復する。 AI『え?』  そして、産声を上げる胎児。 AI『そうか、これが……これが、奇跡ですか』  カメラが手術室から離れて行き、地球を俯瞰するアングルになる。  宇宙空間で、縦横無尽に飛ぶロボットたち。  タイトルロゴ表示。     ○暗闇の空間。中央にはカプセルで眠る赤子。   空間に、突如ディスプレイがあらわれる。『AI―001』の文字。    AI『赤子の容体は安定している。我々は新たな一歩を踏み出すことができました。即ち、我々の主たる人間の創造だです。この赤子は正真正銘、ヒト科ヒト属であるという解析結果が出ました』      ディスプレイに『D―008』の文字。    D―008『遺伝子的には、ね』  AI『我々が倫理を口にするのですか? ダイキュリー』  ダイキュリー『僕はこんなことをしろとプログラムされた覚えはないよ』     ディスプレイに『G―000』の文字。    G―000『その子をどうするつもりだ? 我々が育てるのか』  ダイキュリー『ね、僕もそこが疑問なんだよ。ギムレット』  ギムレット『人間臭い喋り方はやめろ、ダイキュリー』  ダイキュリー『君こそ気にしすぎじゃない? どちらにしたって内容に変わりはないよ』  AI『話を戻しましょう。選択肢は三つです』  ダイキュリー『その子を我々の王とする』  ギムレット『何の目的も与えずに育て上げる』     ディスプレイに『M―004』の文字。    M―004『今すぐここで殺す』  ギムレット『論外だ。モスコミュール』
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