第1章

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 ダイキュリー『それ、いくらなんでも酷くない?』  モスコミュール『酷い? 酷いのはどちらだ? 同じ人間のいない世界で、我々機械に囲まれて育てられるその子が、幸福であると言えるのか? 繁殖どころか群れる事すらできないこの状況で、意味ある生を送れると思うか』 AI『内容が抽象的すぎます』 モスコミュール『主たる人間の幸福を追求することこそ、我々の責務であったはずだ』  黙り込む議会。突然、赤いディスプレイが浮かび上がる。 『WORNING! 敵勢力接近。コード0―7―22。B部隊であると認識しました。詳細情報を各メインCPに転送します』 AI『作戦詳細をアップロード。全隊、所定に位置についてください』 ○宇宙空間。  飛来する大量の蜘蛛型エイリアン。  網で囲うように、ロボットがエイリアンを囲む。そのまま電磁フィールドを展開し、閉じ込める。後方から電磁パルス弾がフィールド内に放たれ、爆発。何体か逃れる。  そのうち一体を、ダイキュリーが槍で仕留める。  もう一体を、モスコミュールが素早い動きで撃ちぬく。  そしてモスコミュールの背後をとった数体を、ギムレットが重力子太鼓で粉砕する。 ○議会。 アナウンス『状況終了。二次勢力確認されません』 AI『あのエイリアンに、人間が滅ぼされて今日で一万と五十日、十五時間七分五十二秒になります。『制宙権』は既に奪われ、我々が自由に動けるのは大気圏付近に限られています。連中はこれからも、地球の資源を狙って我々を攻めたてるでしょう。その中で、この子を育てることができますか?』 ダイキュリー『育てることはできる。でも、僕たちがいつ滅びるか分からない以上、この子の生命を保証できない』 ギムレット『ではどうしますか? やはりこの子を殺すのですか?』  ディスプレイが空間にいくつも浮かび、全てが『objection!(反対)』の文字を表示する。 AI『では、何か案は?』  静まり返る議会。静寂をモスコミュールが破る。 モスコミュール『探すしかない』 ダイキュリー『探す?』 モスコミュール『この子と同じ、人間を探すんだ』 ギムレット『モスコミュール、自分が何を言っているのか分かっているのか?』 ダイキュリー『人間はもう滅んじゃったんだよ。だからこうして新しく作ったんじゃないか』 AI『この宇宙のどこかに、生き残った人間がいるかもしれない。そう言いたいんですね? モスコミュール』
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