神話

11/12
前へ
/12ページ
次へ
 ルクフェル極めて神経質な顔を歪め、喉の奥で罵詈雑言を並べ立てた。 しばらく静かだったが、また面倒な状態になってしまった。 ソルドは無視することにした。 「あぁ、まあ俺のことはどうでもいい。  要するに、もう一度その門が開くのを、阻止すればいいんだな」  ソルドは念を押すように尋ねた。 するとまたリーファは首を横に振る。 「ブサナベンは、天界門については、知らなかった。  ただ、たまたま魔界と接触し、たまたまホロラドというエルキスタの側近の一人と接触し、更なる魔力を得るため、門の解放を目指すようになったの。  あなたとドルアーノのお陰で、門の解放は免れた。  でも、この先はどうかわからない」  ソルドは、およそのことが理解できてきた。 結局、神や魔王の狙いは、光や闇の世界の門を開き、互いに相手を滅ぼそうということだ。 ブサナベンは魔界門を開く力を持つであろう魔導師で、魔王にとって好都合なのは勿論、神にとってもあの魔導師は、必要な存在だった。 ドルアーノは魔封じの力を持つ戦士であり、おそらくは神が闇の世界へ攻め込むとき、その力を何らかの形で利用するつもりだった。 だがそれは、相討ちという、神にとって不都合な形で、目的が全く果たせぬまま決着した。  そして神のリーファに対する微妙な態度。 結局、リーファは神の敵だったのだ。 そして、リーファの全てを知る力、全ての経緯を知るその存在が、神の絶対善を否定する、実に都合の悪いものだった。 「そうするとだ、リーファ。  今までの話からすると、結局その二つの門。  これが二度と開かなければ、とりあえずは治まるってことか?」  ソルドの問いに、ようやくリーファは首を縦に振った。  だが、ソルドは途方にくれる。 存在するかどうかもわからず、その規模もわからず、相手は神や魔王といった、もし存在するのならばあまりに桁違いすぎる相手だ。 「そもそも、俺にそんなのが封印できるのか?  俺は人間だぜ」  そう言うと、リーファは首をまた横に振る。 「あなたには無理。  ルクフェルでも、二つの門を封印はできないわ」  それを聞くと、横にいた魔導師は憤怒の形相で震え始める。 手に持つ杖を握り潰しそうだ。 「じゃぁどうする?  そもそもその門は、どこにあるんだ?」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加