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なぜか来訪者は、青白い顔を怒りにひきつらせている。
ソルドは面倒臭そうだと思いながらも笑顔を作る。
「まぁ、リーファがあんたを探せと言ったから、来たんだ。
が、あいにく今日は、俺は風邪だ。
治ったら行くから、あんたの家を教えてくれ」
それを聞くと、魔導師はぎろりとソルドを睨み付け、何かを言おうと口を開けたり閉めたりしたが、結局、
「家などこの世にはない。
トルキスタにも覗けぬ異空間にある。
貴様はどこを探し回っても俺の所へは来れぬ」
と吐き捨て、その後もソルドが聞き取れないような声で、随分長いこと一人でひたすらぶつぶつ言い続けていた。
「とは言え!」
いきなり魔導師は叫ぶ。
さすがにソルドも驚く。
「なんだってんだ」
「黙れ下郎!
私は封印の術式を極めし者!
ハルバンやリーファ、あるいはハルバンの手による魔界門や天界門の封印の術式も、私は再現せしめんとしている!
そうとも邪魔をするな!」
魔導師は目を真っ赤に充血させ、ただでさえ青白い顔をさらに真っ青にして怒っている。
ソルドは意味がわからない。
喚かれたので、頭ががんがん痛んだ。
「もうわかった、わかったから今日はもう帰ってくれ!
明日の夕方にはたぶん治ってる!
俺は風邪なんだ!」
ソルドは思わず悲痛に叫んだ。
すると魔導師は、急にその気迫をしぼめ、弱々しい声で、
「そ、そうか、すまぬ、また、明日来るから、許せ」
と言い、すごすごとまた窓から出ていってしまう。
飛び降りるつもりかとひやひやしたが、そのままふわりと浮き上がり、煙のように消えてしまった。
「まったく、何なんだ。
魔導師ってのはおかしな奴しかいねぇのかよ」
ソルドは悪態をついて、毛布を頭までかぶった。
喉が痛く、熱も高い。
多少の果物と水だけ掻き込んで、横になった。
あまり寝られず、夜中何度も起きた。
「何年ぶりだ、こんなのは。
戦争が終わって、気が緩んだかな」
だが結局風邪は大したことなく、翌朝には熱もある程度下がり、部屋をうろつくぐらいはできるようになった。
昼食はある程度採れ、約束の夕方にはある程度回復した。
「とは言え、本当に来るのかね」
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