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ふとリーファの顔を思いだし、不安になる。
彼女が必死な思いで伝えようとした男が、向こうから来たのに、自分の体調のせいで追い返してしまった。
これでもしあの奇天烈な魔導師が来なければ、一体どうなるのか。
「来たぞ」
そんなソルドの不安は、昨日と同じように窓から現れた来訪者によって、霧消した。
ソルドは、ある程度風邪も治ったが、まだ体が少しだるいため、ベッドに横になっていたが、魔導師が現れたので起き上がり、ベッドの縁に腰かけた。
魔導師は自分の登場について、語り始めた。
「俺がいかにして現れたか。
疑問だろうから解説しよう。
俺はこの窓を俺がいる異空間の出入り口にして、いつでも来られるようにしたのだ。
実に合理的だ。
貴様もそう思っている筈だ。
そう思うべきだ!」
「あぁはいはい、わかったわかった。
それで、あんたは何ができるの?」
いい加減いらいらして、ソルドはぶっきらぼうに尋ねた。
何と言ってもソルドは、ドルアーノと共にブサナベンの魔物の大軍十万を退けた男である。
実務家としての実力は並大抵ではない。
それゆえ、相手にも手厳しい部分がある。
「あぁ、う、それはだな、封印の術式と、空間操作の術式だ」
「詳しく。
まずは封印の術式を」
ベッドに座ったまま、ソルドは腕組みし、足を組んで、魔導師の説明を促す。
その目は青白い炎を放っているようだ。
「封印の術式。
そもそも封印の術式と言えば」
「待て、この会話は、誰か聞いているのか」
ソルドは何か嫌な疑念を感じたので、魔導師の言葉を止める。
魔導師は目を白黒させ、汗を額に浮かべているが、
「今は空間を閉ざしている。
この空間には、憎いことにリーファができるが、それ以外は神や魔王でさえ侵入不可能だ」
と答えた。
それを聞くとソルドは小さくうなずき、
「よし、続けてくれ。
封印の術式について、そもそもあんたはどの程度のことができる?」
と、さらに訊いた。
「ブサナベンがやった程度なら、造作もない。
あんなのは小手先の芸だ。
俺は究極の存在たる、神、魔王、冥王、精霊王とその娘リーファが持つ力を、術式で再現し、対抗すること。
この世界の、あるいは人間の可能性を求めること。
今では、こと空間操作に関しては、神も魔王も越えた」
「言うねぇ」
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