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「現に神も魔王も、俺の制御する異空間には、一切干渉できぬ」
証拠は、と尋ねようかとも思ったが、それをすると水掛け論になると思われたので、ソルドは一旦飲み込んだ。
「じゃぁ、例えばだ。
今ここで、神に知られることもなく、リーファと話をしたりできるのか?」
「容易いこと。
貴様、どうも俺を愚弄している」
魔導師はいらだたしくそう言うと、何やら呪文を唱え始めた。
世界中の古今の言語に精通するソルドでさえ、聞いたこともない言語だ。
恐らくは異世界か、歴史に残っていない超古代の言語と思われた。
先ほど魔導師が入ってきた両開きの木窓の外が、ふと暗くなる。
見ると、窓の向こう側が、闇に包まれている。
ただでさえ寒かったのが、よりいっそう冷え、粉雪とも地吹雪ともつかないものも流れ込んでくる。
そこに人影が現れる。
リーファだった。
「ありがとう、ルクフェル」
「貴様に礼を言われると、無性に腹が立つ」
魔導師は怒りに顔を歪ませ、顎を斜めに引き寄せるように首をかしげ、喉の奥でひたすら悪態をつき続けた。
悪人ではないらしいが、厄介な人であることは間違いなかった。
ソルドはうんざりし、とりあえず魔導師を無視して、リーファと喋ることにした。
「よう、この通り、ルクフェルさんは見つけたよ。
お陰で少し疲れぎみだ」
頭を掻きながらため息混じりに言うソルドを見て、窓の向こうのリーファは小さく笑った。
「ソルド、彼は、私のことを自分の手で突き止めて、自分で精霊空間とこの世界を繋げて私の所へやって来たの。
本当に、空間操作術だけなら、
トルキスタや冥王ホーツマルグ、魔王エルキスタを越える人なの。
人なのよ、すごいでしょう?
本当に偉大な魔導師だわ」
「馬鹿め、何度も言うが、俺は魔導師ではない。
術式師だ。
魔導という、エルキスタの馬鹿の力を頼るような、下品で野卑なくずどもと一緒にするなと、何度言っても貴様はわからない、まったく馬鹿ばかりで吐き気がする」
どうでもいいじゃねぇか、とソルドはもう少しで言うところだったが、何とかこらえる。
その様子を見て、リーファはまた少し笑う。
彼女には、ソルドが何を考えているか、全てわかってしまう。
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