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ソルドは舌打ちをして、
「で、リーファ。
この術の中だったら、こないだの質問には答えられるんだろ?」
と尋ねた。
リーファは笑顔を消す。
そして、少し苦悶の表情を浮かべたあと、うなずいた。
「そうね、ソルド。
あなたに託すべきだわ。
創造神トルキスタと、魔王エルキスタの争いについて。
彼ら双子の兄弟は、この地上が作られる前の世界で、その支配権を争ったの。
冥王ホーツマルグと私の父、精霊王ハルバン、それに彼ら兄弟は、その実力が拮抗して、うまくバランスが取れていたのだけれど、ある時トルキスタがエルキスタを罠に掛けたわ」
ソルドはそれまで、どこか冗談混じりな雰囲気を漂わせていたが、その気配が消え失せた。
「一度整理しよう。
まずはトルキスタという名だ。
さっきから気になっていたんだが、トルキスタとは我が聖教の名であって、神に名はないはずだ。
なぜなら神は絶対だからだ。
絶対唯一の神に、名は不要。
またそれは不敬だとも考えられている」
「絶対とは、そこにいる女の万知の力のみ。
絶対でないから名がある。
現にこの空間は、神の一切の干渉を許さない」
魔導師が口を挟む。
確かに、この魔導師の力が本物なら、神は絶対でなくなる。
「なるほど、神の名がトルキスタだというのは判った。
トルキスタ聖教という名は、神のなに由来するという事なのだろう。
だが、神と魔王が双子で、神が魔王を罠に掛けた。
それは一体、どういうことだ。
神は絶対善であり、何者かをたばかるような事はないと、今は信じられている」
だがソルドは、自分で自分の矛盾に気付く。
絶対はリーファの全てを知る力以外に存在しない。
ならば、神が絶対善というのも、あり得ない。
そもそも善悪などは、主観的、相対的な観念に過ぎない。
宗教ならではの幻想に過ぎない。
その事は、ソルド自身がトルキスタ聖教に対して常に抱き続けた信念だった筈だ。
「なるほどな。
で、魔王はどうなったんだ?」
ソルドはリーファに続きを促した。
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