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「魔王は、今魔界と呼ばれている世界に落とされたわ。
そこはエルキスタが元々持っていた神としての力を封じる場所。
トルキスタはこれで、唯一神となった。
でも、エルキスタは、その怒りを糧に、新たな力を手に入れ、新たな勢力を作ったの。
そこでエルキスタは王、魔王となった。
その後、エルキスタは天界への攻め込んだの。
戦争は十三万年続いて、計り知れない魔物と天使、そして精霊たちが死んだり、消滅したわ」
ソルドには、十三万年という途方もない数がよく理解できない。
まさに神話の世界だったし、それがリーファの口から語られてもなお、現実に起こったこととは思えなかった。
ソルドは頭を掻きながら、眉をしかめた。
「まぁいい。
で、その戦いは、どうやって終わったんだ?」
ソルドが促すと、リーファは続けた。
「私の父ハルバンと冥王ホーツマルグは、トルキスタのいる光の世界と、エルキスタのいる闇の世界、この間にもうひとつ世界を作ることにしたの。
それが、今私たちのいるこの世界」
「なるほどな。
つまりこの世界は、神と魔王が争えないように、二人の世界を隔てる壁として作られたわけだ
それで戦争は終わったんだな」
ソルドがそう言うと、リーファは顔を曇らせた。
「そうはならなかったわ。
神も魔王も、この世界を乗り越えるべく、色んな手を使ったわ。
実際、それぞれの世界とこの世界には、いくつか行き来する方法があったし、そもそも父ハルバンと冥王が、二人を説得するために開けていた道があるの。
二人の野心家たちは、父や冥王の隙をついてその通路を通り、この世界を踏み荒らし、互いの世界へ攻め込んだ」
語尾が、震えた。
リーファはか細い手を握りしめ、必死で涙をこらえていた。
何か続きを言おうとしたが、なかなか言い出せず、ついにぼろぼろと涙ばかりが溢れてきた。
それでも彼女は涙を拭おうとせず、目を見開き、ソルドを必死で見据え、叫んだ。
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