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「失礼します。」
ガラガラッ。
「やぁ、時雨ちゃん!
待ってたよ!」
「こんにちは。」
私が近藤さんの居る部屋に行くと、近藤さんの隣に眼鏡をかけた優しそうな顔つきの人が座っていた。
「この方は?」
「ここに住むからには彼を紹介しておかないと、と思ってね。
彼は山南。新撰組のもう一人の副長をやってもらっている。」
「山南です。
君が噂の時雨ちゃんだね?
なるほど…、こりゃウチの男達が騒ぐわけだ。」
「だろぉ?可愛いだろぉ?」
私は近藤さんの娘みたいなポジションなんだろうか。
山南さん…、確か歴史で見た事がある。
隊士達からは仏の山南と呼ばれて親しまれている人だ。
「ウチの男達はそれぞれが『誠』を背負って戦ってくれている。
でも、いつ死んでもおかしくないこの乱れた世で皆不安もあるんだ。
君の存在が隊士達に少しでも安らぎを与えられるなら、是非しばらく此処に居てもらいたい。
いきなり来て重いかもしれないが、よろしく頼むよ。」
そう言って山南さんはニコリと笑顔を見せた。
なるほど、これは仏だ。
「何をしているんですか……?」
ハッ!
あまりに神々しくて両手を合わせてしまった!
「掃除とか料理くらいしかできないかもしれませんが、コチラこそよろしくお願いします!」
『誠』を背負うか…。
私はふと、父が言った覚悟と言う言葉を思い出した。
私には人を斬るほどの覚悟はない。
力があっても、こうやって掃除や料理を作ってあげるのが精一杯だな…。
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